若さは、食べ方で差がつく。― 医師が語るタンパク質の新常識

私は、最近疲れが抜けにくく、以前よりも回復が遅い気がしていました。

それは年齢のせいなのか、
それとも、日々の積み重ねによるものなのか。

そんな疑問をきっかけに、
機能性医学の視点から「食と健康」を提唱する医師、
斎藤糧三先生に話を伺いました。

テーマは、いま見直されている「タンパク質」と、
そこから考える“若さを保つための食べ方”。

取材の中で見えてきたのは、
私たちが思っている以上に、
体は「足りていない状態」で動いているかもしれない、という事実でした。

「最近、なんだか疲れが抜けにくくて…」

取材の冒頭、私はそんな曖昧な感覚をそのまま口にしてみました。
年齢のせいかもしれない。けれど、それだけとも言い切れない気もしていた。

すると斎藤先生は、静かにこう言いました。

斎藤先生:「多くの場合は、“材料不足”です」

その一言に、少しだけドキッとした。


ライフスタイルを整える、最初の一歩は「食」から

斎藤先生:「今の医療費って、ほとんどが慢性病に使われているんですね。薬で根本的に治らない、長く付き合っていく病気です。最近のデータだと、9割近くがそういうものだと言われています」

私は思わず、「そんなに…」と心の中でつぶやいた。

斎藤先生:「そうなると、やっぱり生活習慣を見直さないといけない。ライフスタイルですね。食事だけじゃなくて、睡眠とか運動とか、そういうもの全部含めて整えていく必要があります」

その中でも、まずは“食”から。

斎藤先生:「体は食べた物でできていますから。ここを変えることが、いちばんベースになります」


「本物の食材」に戻るという流れ

では、具体的に何から変えればいいのか。

斎藤先生:「2026年にアメリカの農務省が新しいガイドラインを出しているんですけど、そこではっきり言っているのは、“本物の食材(Real Food)を食べなさい”ということです」

本物の食材。

斎藤先生:「いわゆる加工食品をできるだけ減らす。精製された糖とか、人工甘味料とか、そういうものは避けていく。昔ながらの、しっかり形のある食材に戻していくという流れですね」

とてもシンプルで、本質的な考え方だと思った。

その言葉を聞いて、
“何を食べるか”だけでなく、
“どんな背景でつくられたものか”も大切になるのだと感じました。


タンパク質の基準は「倍」に変わった

そして話は、タンパク質へと移っていく。

斎藤先生:「タンパク質の考え方も、いま大きく変わってきています」

先生は少し言葉を区切りながら、こう続けました。

斎藤先生:「これまでは、体重1kgあたり0.8gでいいと言われていました。でも今は、その倍ですね。1.6gを目安にしましょう、という流れに変わっています」

倍。
でもまだピンとこないので、食材で例えたらどのくらいなのか聞いてみました。

斎藤先生:「例えば体重50kgの人なら、1日80g。肉や魚でいうと、だいたい400gくらいになります」

えっ!?… 正直、思っていたより多い。

そんなに食べて、太らないのだろうか。
そう思い、そのまま疑問をぶつけてみた。

斎藤先生:「カロリーの考え方自体が変わってきているんです。今は“体をどう機能させるか”という視点で考えます」

斎藤先生:「適切なタンパク質や脂質は、むしろ必要なものです。カロリーを気にするよりも、必要なものを満たすことが大切ですね」

これまでの“普通”が、もう基準ではない。
そんな感覚が少しずつ見えてきた。


タンパク質は「筋肉だけ」ではない

斎藤先生:「タンパク質って、筋肉のためのものだと思われがちなんですけど、それだけじゃないんです」

先生はそう言って、少しゆっくりと説明を続けた。

斎藤先生:「脳の神経伝達物質もタンパク質ですし、血液もそうですし、解毒もタンパク質が関わっています。体のいろんな機能のベースになっているんですね」

思っていたより、ずっと広い。

斎藤先生:「だから、タンパク質が足りていないと、体が本来のパフォーマンスを出せなくなるんです」

“なんとなく不調”という言葉が、頭に浮かぶ。

斎藤先生:「疲れやすいとか、回復が遅いとか、そういう形で出てくることが多いですね」

それはもしかすると、
足りていない状態が“普通”になってしまっているだけなのかもしれない。


タンパク質を活かすカギは「動くこと」

斎藤先生:「タンパク質を活かすカギは、“動くこと”です」

斎藤先生:「せっかく良質なタンパク質を摂っても、筋肉に“使え”というシグナルがなければ、その多くは活かしきれません」

斎藤先生:「特に加齢とともに、食べたアミノ酸に対する筋肉の反応は鈍くなってきます。でも運動をすると、筋肉のスイッチが入るんです」

これまで、タンパク質は「摂ること」で体に使われるものだと思っていましたが、
実際には“使われる状態”をつくらなければ、十分には活かされないようです。

斎藤先生:「摂ったタンパク質がきちんと筋合成に回るようになる。つまり、タンパク質と運動は“掛け算”の関係なんです」

“摂る”ことと“動く”こと。
その両方があって、はじめて意味を持つのだと感じました。


「1,000歩多く歩く」ことから始める

では、どんな運動を取り入れればいいのでしょうか。

斎藤先生:「まずはシンプルに、歩くことからでいいと思います」

斎藤先生:「研究でも、60歳以上の方は1日6,000〜8,000歩を歩くだけで、健康上のメリットが得られることがわかっています」

特別なことをしなくてもいい、という言葉に少し安心した。

斎藤先生:「今より1,000歩多く歩く――それだけで立派な抗老化習慣です。」

さらに、

斎藤先生:「スクワットや踏み台昇降など自分の体重を使った筋力系の動きを加えてほしい。」

斎藤先生:「そして動いたあとに、タンパク質を30g程度しっかり摂る。これだけで、筋肉の合成反応は大きく変わります。」

運動と栄養が、ここでもつながっていきます。

斎藤先生:「ウォーキングのような有酸素運動は、細胞のエネルギー工場であるミトコンドリアを活性化して、慢性的な炎症を抑える働きもあります」

日々の小さな積み重ねが、
体の内側から整えていく。

そう考えると、運動も少し身近なものに感じられました。

若さは、“機能”で決まる

ここで、ふと「若さ」という言葉が気になった。

見た目の話だと思っていたけれど、
どうやらそれだけではないらしい。

斎藤先生 :「若さっていうのは、体がちゃんと機能している状態なんです」

機能している状態。

斎藤先生:「必要なものがちゃんとあって、しっかりと回る。そういう状態が保たれているかどうかですね」

“回る”という言葉が、印象に残った。

滞りなく動くこと。
無理なく維持できること。
それが、若さの正体なのかもしれない。

斎藤先生:「材料が足りていれば、体はちゃんと働こうとします。でも足りていなければ、その力も落ちていく」

その差は、すぐには見えない。
けれど、少しずつ積み重なっていく。

それがやがて、
“老化”として現れてくる。

そんなふうに聞こえました。


老化は、「小さな炎症の連鎖」で進んでいく

斎藤先生:「老化って、ある日急に起こるわけじゃないんですよね」

先生はそう言って、体の中で起きていることを丁寧に説明してくれました。

斎藤先生:「日常の中で、体には小さな炎症がずっと起きています。熱が出るような大きなものではなくて、もっと微弱なものですね」

目には見えない。
自覚もほとんどない。

斎藤先生:「ただ、その小さな炎症がまた次の炎症を引き起こしていくんです。それが積み重なっていくことで、体の機能が少しずつ落ちていく」

“連鎖”という言葉が、しっくりくる。

ひとつひとつは小さくても、
止まらなければ、確実に影響していく。

斎藤先生:「回復が追いつかない状態が続くと、それがパフォーマンスの低下や、さまざまな不調につながっていきます」

それが積み重なった先にあるのが、老化。

そう考えると、
とても静かで、でも確実に進んでいくもののように思えた。

その炎症を、コントロールできるか

では、その流れは止められないのか。

斎藤先生:「完全にゼロにすることはできませんが、コントロールすることはできます」

その方法が、日々の生活にある。

斎藤先生:「加工食品を減らす“引き算”と、必要な栄養をしっかり入れる“足し算”。この両方が大事です」

さらに、

斎藤先生:「食と運動、そして睡眠やストレスも含めて、ライフスタイル全体で炎症はコントロールできます」

特別なことではない。
けれど、確実に影響するものばかりだ。

理論上、人は120歳まで生きられる

そして、少し未来の話になった。

斎藤先生:「今の研究では、老化細胞をコントロールできれば、理論上は120歳まで生きられると言われています」

120歳。

少し現実離れした数字にも感じる。

斎藤先生:「老化というのは、ある意味で“炎症の積み重なり”なので、それをどれだけ抑えられるか、という話なんです」

つまり、

小さな炎症を起こさないこと。
起きても、すぐに回復できる状態を保つこと。

その積み重ねが、未来を変えていく。

斎藤先生:「日常の中でできることは、思っているよりも多いんですよ」

そう言われて、少しだけ現実味が出てきた。


食材は「何を食べて育ったか」まで見る

“どんな背景でつくられたものか”という話が出たとき、
ひとつ気になることがあった。

そういえば先生は、牧草牛にも力を入れていると聞いたことがある。

そこで、率直に聞いてみました。

なぜ、そこまで“牧草牛”にこだわるのか。

すると先生は、少し間をおいてこう答えた。

斎藤先生:「食材って、その動物が何を食べて育ったかがすごく大事なんです」

少し意外だった。

斎藤先生:「その影響は、最終的に私たちの体に入ってきますから」

つまり、肉そのものだけでなく、
その“背景”まで含めて、栄養になるということ。

斎藤先生:「例えば牛でも、何を食べて育ったかで脂質のバランスも変わりますし、体への影響も変わってきます」

なるほど、と腑に落ちる。

斎藤先生:「牧草で育った牛は、自然に近い形で育っていますし、管理された環境で育てられているものは、栄養源としても良い選択肢になります」

さらに先生は、自身の取り組みについても触れた。

斎藤先生:「実際に、そういった牧草牛を扱う取り組みもしています。日常の中で選択できる環境をつくることも大事だと思っているので」

“何を食べるか”だけでなく、
“何を食べて育ったものか”まで意識する。

その視点は、これまであまり持っていなかった気がする。


まずは「ちゃんと寝る」ことから

最後に、これから先のことを聞いてみました。

「私たちが健康でい続けるために、
いちばん意識しておくべきことは何でしょうか?」

すると先生は、少し考えるようにしてから、こう答えた。

斎藤先生:「これ、よく聞かれる質問なんですけど」

そして、続けて出てきた言葉は、とてもシンプルだった。

斎藤先生:「今日から“タダで”できることとしては、しっかり寝ることですね。8時間睡眠です」

少し意外で、でもどこか納得感があった。

斎藤先生:「女性の場合、6時間以下の睡眠だと、乳がんのリスクが1.6倍になるというデータもあります。それくらい、睡眠は重要なんです」

さらに先生は、こう付け加えた。

斎藤先生:「僕は、睡眠は栄養と同じくらい重要だと考えています」

栄養と同じくらい。

これまで“食べること”に意識が向いていた分、
その言葉は少し印象的に響きました。

斎藤先生:「水をちゃんと飲むこと。アルコールや精製糖を摂りすぎないこと。そういう基本的なところも大切です」

特別なことではない。

でも、どれも今日からできることばかりだ。

そして、その積み重ねが、
体の状態を静かに変えていく。


若さは、日々の中でつくられていく

取材を終えて感じたのは、
若さを保つために必要なのは、特別なことではなく、
日々の選択の積み重ねなのかもしれない、ということでした。

体の中では、気づかないほど小さな変化が、
毎日静かに積み重なっている。

それは、整えることもできれば、
崩してしまうこともできるもの。

「食べ方を変えることは、体を変えることにつながります」

先生のその言葉を思い出しながら、
まずは今日の食事を、少しだけ意識してみようと思う。

しっかり眠ること。
体に必要なものを、きちんと満たすこと。

どれも、決して難しいことではない。

だからこそ、続けていける。

自分の体と、少しだけ向き合うことから。
その積み重ねが、これからの自分をつくっていくのかもしれない。

まとめ

今回の話を通して見えてきたのは、
体は日々の積み重ねでつくられている、というシンプルな事実でした。

・食事は「本物の食材」を選ぶこと
・タンパク質はこれまでの“倍”を意識すること
・不調は「材料不足」から起きている可能性があること
・老化は、小さな炎症の積み重ねで進んでいくこと
・そしてそれは、食事・運動・睡眠といった日々の習慣でコントロールできること

どれも、特別なことではありません。

しっかり食べて、しっかり動いて、しっかり眠る。
体に必要なものを、きちんと満たす。

その積み重ねが、これからのコンディションをつくっていきます。

まずは、できるところから少しずつ。
それが、いちばん自然な一歩です。


Profile 斎藤 糧三
医師/日本機能性医学研究所所長

1973年生まれ。日本医科大学卒業後、産婦人科医としてキャリアをスタート。美容皮膚科治療、栄養療法、点滴療法、ホルモン療法を統合した独自のアンチエイジング理論を確立し、2008年に「日本機能性医学研究所」を設立。
2017年には日本初の牧草牛専門精肉店「Saito Farm」をオープン。機能性医学の普及とともに、食からの健康づくりを提唱している。2022年、機能性医学と再生医療を融合させた治療拠点「斎藤クリニック」を開設。

*株式会社ライフクエスト https://www.life-q.jp/
*斎藤クリニック https://www.dr-saito.jp/
*Saito Farm https://saitofarm.jp/

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Editorial Team

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